ピジン・クリオールについてのレポート

1.ピジン・クリオールとは?

 ピジン:共通の言語を持たない人々の間でコミュニケーションの手段として用いられる、簡略化された補助言語。

 クリオール:ピジンを母語とする話者が現れると、クリオールと呼ばれる。

話される地域:赤道地帯の沿岸に多い。かつてヨーロッパからの植民地開拓者や貿易商人が活躍した地域とも重なる。

 

言語はいかに変化するか、という問いに対し、直接観察可能な証拠を提供してくれるという理由から、社会言語学的な関心が持たれてきた。変化に関しては、最初にピジンが形成される過程と、ピジンからクリオールへの変化の過程の二つがある。

ピジンの生まれる背景には、

 ・言語的背景の異なる人々の間で、貿易や統治を行うため 

・新世界に奴隷として連れて行かれたアフリカの人々の間での意思疎通の手段

などがある。

 

2.ピジンの言語的特徴

単数/複数の区別は名詞に現れない。また、動詞は、人称、数によって変化することはない。

Wanpela man I kam.  One man comes.

Sixpela man I kam.  Six men come.

 

動詞は、時制やアスペクトの区別をするために変化することはない。文修飾語や助動詞によって時制やアスペクトを表す。

I kam yestadei.   He came yesterday.

Em I bin kam.   He came.

Bai em I kam.   He will come.

 

③be動詞などの繋辞を欠くことが多い。

i big He is big.

 

語彙が小さい。1つの単語がカバーする意味内容は広く、文脈によってどの意味か明らかになる。また、同一の単語がいくつかの品詞として機能する。

gras grass

mausgras moustache

gras bilob hed hair

gud hat sincere

sip ship

sipsip sheep

 

発音は簡略化される。語彙の多くは優勢語であるヨーロッパ語から来ているが、発音の難しい音や音連続は、それより発音の容易な音に取って代わられる。

tei stay

girin green

 

どの単語も同じ程度の強勢を置いてゆっくり話される傾向が見られる。

 

3.ピジンからクリオールへの変化

ピジンを母語とする話者が増えると、日常生活のあらゆる目的で使える言語へと展開する。語彙は増し、文法・発音は複雑化し、話すスピードも上がる。関係詞節の発達の兆しが見えたりもする。明確な基準はないが、この状態になるとクリオールと呼ばれるようになる。社会環境によっては、この後、ピジンの基盤となった言語(:優勢語)の影響を受け、脱クリオール化が始まることがある。その間のいくつかの変種を、ポストクリオール連続体という。この場合、純粋のクリオールを基層語basilect、標準語を上層語acrolect、その中間の変種を中層語mesolectと呼ぶ。

 

参考文献:中尾俊夫 日比谷潤子 服部範子 共著 「社会言語学概論」1997年 くろしお出版

 

以下Wikipediaより、ピジンの例です。

 

ピジン中国語の例

『国語文化講座 第六巻 国語進出篇』より、満洲国におけるピジン中国語の実例。日系官吏の妻と、「満系」(現地の中国人)の野菜売りの会話。

 

ニーデ、トーフト、イーヤンデ、ショーショー、カタイカタイ、メーユー?(?的、豆腐と、一?的、少少、固い固い、没有?

直訳「あなたの、豆腐とおんなじでちょっと固いもの、ない?」

意訳「コンニャクはない?」

 

ニーデ、チャガ、ダイコン、ナカ、トンネル、ターター、ユーデ、ブーシンナ!?的、?个、大根、中、tunnel、大大、有的、不行?!

直訳「あなたの、このダイコン、なか、トンネル、大々的に有る、ダメよ!

 

意訳「このダイコンには鬆(す)が入(い)っているわ。値段を安くして」

 

ピジン日本語の例(協和語)

協和語(きょうわご)は、満州国の建国初期に用いられた簡易的な日本語である。興亜語(こうあご)、日満語(にちまんご)、大東亜語(だいとうあご)などとも呼ばれた。

用例

私日本人アルヨ「私は日本人です」の意味。

姑娘(グーニャン)きれいアルネ「お嬢さんはきれいですね」の意味。

あなた座るの椅子ないアルヨ「あなたが座る椅子がありません」。否定辞「ない」+肯定語「ある」となるため、しばしば誤解を生じる。

アイヤー(?呀)驚いたときなどの感嘆詞。中国語から採られた。

 

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